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【停電時の舞台裏】原因と対応について解説

【停電時の舞台裏】原因と対応について解説
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「停電時って技術者はどう動くの?」
「停電が生じる原因や停電時の対応について知りたい」

とお考えではありませんか?

停電は、自然災害や電気の使い過ぎ、漏電が原因で生じます。自然災害による被害は電力会社が対応しますが、電気の使い過ぎや漏電に関しては一般の方でも対策が可能です。

本記事では、停電が起きる原因と停電時の裏側について解説します。現場で行っている停電・漏電時の対応についても解説していますので、ぜひご覧ください。

01.停電が起きる原因は何?

停電が起きる原因には、主に次の3つがあります。

  • 自然災害
  • 電気の使い過ぎ
  • 漏電

それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

原因①自然災害

まず停電が起きる1つ目の原因が自然災害です。自然災害とは具体的に次が該当します。

  • 地震
  • 台風
  • 大雪
  • 津波

など
地震に関しては、その後に起こりうる津波によって電気設備の損壊や水没が生じて大規模な停電を起こします。

雷に関しても落雷した際に、大電流が電気設備の内部に流れて損壊や火災といった電気災害の可能性につながります。また、落雷する前の雷雲の段階でも電気設備に悪い影響を及ぼすのが特徴です。

このほか台風による停電の場合、雨量と同時に風の強さによっても影響します。強風が起こることで送電線が断線し、大規模な停電が起こるといった仕組みです。

原因②電気の使い過ぎ

停電が起きる2つ目の原因が電気の使い過ぎです。一般のご家庭において消費電力の高い家電を同時に使用することで生じます。

  • ドライヤー
  • エアコン
  • 電子レンジ
  • こたつ

など

自然災害による停電を除いて起きやすい停電は電気の使い過ぎです。この原因で停電が起こる場合、建物全体ではなく特定の場所で停電が起きます。

また電気を使用する家電や照明は、電気のエネルギーを風や光、熱のエネルギーに変換して使用するものです。その中でも特に、電気を熱に変換して使用する家電は消費電力が高いので、同時使用しすぎるとブレーカーが落ちやすくなります。

原因③漏電

停電が起きる3つ目の原因が漏電です。漏電とは、電気が通るはずの道(回路)を外れて別の場所に流れる現象を言います。

漏電によって大きな漏れ電流が流れると建物の火災や人体への感電などのリスクがあり、非常に危険です。そのため低圧で受電している建物では、漏電ブレーカーと呼ばれる漏電が起きた時に回路を遮断する装置を設置しています。

漏電ブレーカーが作動すると電気の流れがストップして建物が停電するといった流れです。

02.停電時の電力会社の対応

建物で停電が発生した場合は、電力会社やそのグループ会社が対応を行っています。対応の内容としては、次の通りです。

  • 停電箇所の特定と復旧作業
  • 台風などの際は電気設備の清掃・点検
  • 家庭内で停電が起きた場合は対応の案内

筆者は、電気設備の保安監督をメインとする電気主任技術者として勤務した経験があります。その経験を踏まえてそれぞれの対応について解説するので、ぜひご確認ください。

停電箇所の特定と復旧作業

停電が生じた場合は速やかに発生個所の特定と復旧作業を行う必要があります。基本的な流れとしては、次の通りです。

1.変電所に近いエリアから順番に流すことで原因箇所を特定
2.問題箇所に技術者が出動して電柱を1本ずつ調査
3.異常のある場所の修理や接触物の除去
4.復旧完了

早い場合は数十分~1時間程度で復旧します。

ただし大型台風などの自然災害の場合、起こりうるのが鉄塔や電柱などの倒壊です。この場合は復旧までに数日、長くて数週間要することがあります。

大規模停電の場合は、復旧の準備を多くの技術者が連携して行います。供給エリアにお住いの住民に向けての情報発信や記者会見、復旧時間の算出も必要な取り組みです。

台風による停電は、大雨に打たれながら作業することもあるので体力を使います。多くの技術者が連携して電気の安全を守りつつ、可能な限り早くの復旧を目指しているのが現場の裏側です。

台風などの際は電気設備の清掃・点検

先ほどは、送配電部分を中心にお話ししましたが、建物の電気設備においても復旧作業を行います。特に台風の場合、電気設備の水没などが起こりうるためです。

台風が過ぎた後に建物内で停電が起きている場合は、電気設備が水没している可能性が高いです。その場合は電気設備の清掃と点検、送電作業などの対処を行います。

絶縁抵抗値などを測定して漏電のリスクや電気機器の絶縁状態を測定し、復旧できる場合は区分開閉器を接続したり非常用予備発電設備を動作させたりするのが作業内容です。

ただし、電気設備が水没している場合は1件だけでなく複数の建物で同様の状態といったケースが多いため、他県から技術者を応援に呼んだり逆に応援に行ったりします。

家庭内で停電が起きた場合は対応の案内

筆者が勤務していた企業は月に数回、電話当番がありました。その際に「家の電気が使えなくなった」などの相談を受けた時、現場に出動したり電話で案内したりします。

電話を受けて多いのは「建物の〇〇(特定場所)の電気が使えなくなった」といった電話です。事業所や一般のご家庭に共通して、ブレーカーが落ちた際の対処法についてのご相談が多い印象ですね。

稀に「家中の電気が消えたけどどうしたらいい?」といった主のブレーカー(漏電ブレーカー)が動作して停電される方もいます。

そういった方に向けて、現場での復旧作業を行ったり電話で必要な措置を案内するのも技術者が行っている仕事です。

03.現場で行っている漏電や停電時の対応

ここまで、停電の原因や自然災害などで停電が起きた場合にしている電力会社の対応について解説しました。

ここからは、電気主任技術者などの電気設備を保安管理する技術者が現場で行う漏電箇所の特定作業や電話で案内している停電時の対応について解説します。

漏電箇所の特定

漏電が発生している場合、漏れ電流値の測定や絶縁抵抗値の低さから不良箇所を特定します。

電気が通電状態の場合、漏れ電流測定を特定することがほとんどです。クランプ形電流計を用いて受電設備の漏れ電流を測定します。

その後、供給回路の漏れ電流を1つずつ確認して不良が生じている回路を特定、そのフロアへ足を運び使用している電気機器で可能な場合は漏れ電流を測定して完全に漏電の原因を特定するといった流れです。

一方で絶縁抵抗値の測定は、年次点検と呼ばれる年に1回行う停電をした状態での点検の際に用います。絶縁抵抗とは回路が漏電するのを防ぐための性能を表すものなので、基準値よりも低い場合は漏電を起こす可能性が高いです。

こちらも先ほどと同様に、受電設備→回路の順番で測定します。大型の建物は配電盤が多く設置されているので、場所を移動して測定してを繰り返して特定する流れです。

停電が起きた場合の対応

一般のご家庭で停電が起きた場合「漏電ブレーカー」又は「配線用ブレーカー」のどちらが動作しているかで対処の方法が異なります。

配線用ブレーカーだけが落ちている場合は、配電盤に表記されているブレーカーで問題が起きている可能性が高いです。最初の方でも解説した、電気の使い過ぎなどが考えられる原因ですね。

簡単に対処できるので、次の方法で実践してみてください。

1.ブレーカーが落ちたフロアを確認
2.フロアの家電製品の電源をOFFにする
3.ブレーカーのスイッチをONにする
4.家電製品のスイッチをONにして様子を見る
5.問題なければいつも通り使用して問題なし

一方で漏電ブレーカーが動作している場合、どこかのフロアで漏電している可能性があります。次の方法でブレーカーの入れ直しを行いましょう。

1.ブレーカーが落ちた時の使用状況を確認(家電製品はそのままで問題なし)
2.配線用ブレーカー(子ブレーカー)を全てOFFにする
3.漏電ブレーカーをONにする
4.順番に配線用ブレーカーをONにする
5.順番に子ブレーカーをONにする
6.順番にONにして漏電ブレーカーが切れた場合はその時の配線用ブレーカーをOFFにする
7.漏電ブレーカーを再びONにして他の配線用ブレーカーをONにする

漏電ブレーカーが何度も動作する場合は、漏電の疑いやブレーカーの不良などが考えられるので、業者に依頼して対応してもらいましょう。

資格の免状を持っていない方は、電気工事に従事できません。未保有の方が電気工事すると感電や電気火災の危険性もあるため、専門の業者へ必ず依頼してください。

04.自宅でできる停電対策・便利グッズ

日常生活でもポイントさえ押さえていれば、簡単に停電は対策可能です。ここでは、停電の対策方法と停電時の便利グッズについて解説します。

自宅でできる停電・節電対策

自宅で簡単に実践できる停電・節電対策は、主に以下の3つです。

  • 消費電力の多い家電を一か所で使わない
  • 家電のアースは接続する
  • 使わない家電のコンセントを抜く

消費電力の多い家電を一か所で使用すると電気の使い過ぎでブレーカーが落ちる可能性があります。もし同時使用したい場合は、別のフロアに分けて使用すると許容電流内に収められるのでおすすめです。

また、漏電による感電を防ぐために家電にはアースを使用しましょう。アース線は漏電の際に流れる漏れ電流を大地に逃がす役割があります。

このほか「簡単に電気代を節約したい」とお考えの方は、使わない家電の電源タップをOFFにしたりコンセントを抜いたりすることを実践してください。

家電はコンセントを抜いているだけでも待機電力を消費します。待機電力は年間の電気代の5〜6%程度を占めるため、カットするだけでも大きな効果が期待できます。

停電グッズとしてポータブル電源がおすすめ

非常時の停電グッズとしては、ポータブル電源がおすすめです。ポータブル電源にはバッテリーが内蔵されているので、非常時の電気供給で役に立ちます。

USBポートやコンセントポートが設けられているため、スマホをはじめとしたさまざまな家電の使用も可能です。

普段使いであれば、キャンプや車中泊などで活用できます。災害などによる停電時にも大きく役立つので、一家に一台用意しておくと非常に便利です。

▼ポータブル電源

まとめ

本記事では停電が起きる原因と停電時の裏側について、現場で行っている停電・漏電時の対応とあわせて解説しました。

停電は、自然災害や電気の使い過ぎなどが原因で起こります。自然災害が生じた場合、多くの技術者が連携して停電箇所の特定や復旧作業に取り掛かっているのが裏側の実態です。

また、電気の使い過ぎによる停電は対処も簡単なので、本記事を参考に焦らずご対応ください。停電時の便利グッズが欲しい方はポータブル電源の使用をおすすめします。

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Written by書いた人

ワタル

【取得資格】第二種電気工事士、第一種電気工事士、電験三種、エネルギー管理士(電気分野)、消防設備士乙種6類
【職歴】電気科新卒→大手電力グループ会社に入社→電気主任技術者として勤務→2019年1月退職→フリーのWebライター兼編集者として活動。
「電気工事士入門の書」

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