WORK

第3章 消防設備業界のルフィが挑む試練

第3章 消防設備業界のルフィが挑む試練
SHARE

消防設備点検やビルメンテナンスにおいてワーカーと発注者をマッチングさせるサービス『ビルメ』。業界が抱える人材不足問題の解消や、気軽に副業が可能になると話題になりました。そんな画期的なサービス『ビルメ』創業者の吉村社長に4回に渡ってインタビューをします!
上京し、無事に消防設備会社を起業。仲間も増え仕事マッチングサービス『ビルメ』をリリースすることまでできました。今回は『ビルメ』リリース後に向き合った試練や対策などについてお伺いします。

念願のリリース!でも、次なる試練が。

Q1.『ビルメ』は今や業界ではみんなが知っているサービスとなりましたが、リリースしたばかりはどんな感じでしたか?

すぐにみんなが使ってくれると思っていたんですよね。開発するまでに1年半、開発してからもITのことは分からないから、遠回りして1年半もかかってしまいました。構想から3年経ったところで、待ちに待ったリリースでした。「いっぱい会社が登録してくれて、いっぱいワーカーが集まって、いっぱいマッチングが起きるんや!」って思ったんですよ。でも実際は1年半くらい誰にも使われませんでした。
こんなにいいものがありますよって企業様に提案しても誰も案件を載せてくれない。「怖くて載せれるか。知らない人を呼ぶなんて。」って言われました。案件がないから、ワーカー様は登録しても辞めますよね。最初はそういう状況で全然マッチングが起きなくて、ホンマに苦しい時期でした。
でもチームのみんなは諦めずにずっと試行錯誤の中で営業をやってくれたんです。ワーカー様を集めるために試験会場前でビラを撒いたりしました。ビラは『ビルメ』のリリース前の運用実験段階から撒いているし、アルバイト募集でも撒いているから、もう僕はチラシ配り歴4年以上のベテランなんです(笑)今も『ビルメ』のチラシを撒いていますけど、そうやってちょっとずつ登録が増えていって、今のようにちゃんとマッチングが起きるようになりました。

ブレイクのきっかけ

Q2.なかなか使われなかったという『ビルメ』の認知度が上がったきっかけは何でしょうか?

やっぱりザブングルの加藤さんとの出会いが転機ですね。加藤さんとの出会いは僕が出版した本がきっかけです。初めはチラシ効果もあって副業で携わってみたいという人が登録していました。企業様へはチームが営業をした結果で増えていって、そして加藤さんのおかげでまたワーカー様が増えたという感じです。
現時点でワーカー様は3000名くらい、企業様は約180社です。(2022年12月時点)
もともと関東から開始したので関西より東京の方がマッチングしやすいですね。ワーカー様が増えるほど企業様とのマッチングは良くなるので、これからもサービスをもっと向上させて満足してもらえる様にしていきますよ!

更なる進化のために

Q3.ブレイク後は何か新しく課題が出てきたりしましたか?

『ビルメ』っていうサービスはまだまだ僕たちにとってはブレイクって言えるほどの状況ではないです。
でも比較的多くの方々にご利用していただいている中で、多く上がった課題の一つは保険ですね。『ビルメ』では、ワーカー様がいて作業員を探してる企業様がいて、マッチングして働くという中で、ワーカー様が現場で何か物を壊してしまったりとか、現場にいる方に怪我をさせてしまったりとか、 そういった時どうするのかっていうことが問題だったんです。もちろん僕たちもリリースする前からそれは分かっていて、保険を作りたかったんですが、最初はなかなか保険会社に取り合ってもらえませんでした。でも企業様からはそういった要望がものすごく多かったです。今となってはサービスが回ったおかげで保険会社さんと提携・タイアップさせてもらい「ビルメ保険」という損害賠保険ができました。これは一つ大きな成果やなあっていう風に思ってますね。
もう一つはスクールです。これも当初から構想としてはありましたが、こういうスクールを作ることはかなり大変だとチームメンバーとも話していました。まずはスクールのない状態でサービスをスタートしたんですけれども、ワーカー様の仕事スキルをしっかりと見える化してほしいという要望があがりました。
『ビルメ』ではスキル別に5ランクで分けているんですけれども、例えばスキル2の「消火器の点検ができる」というのはどこまでの作業ができるのか、(基準が)人それぞれ違うんですね。なのでそれらを統一化する『ビルメ作業マニュアル』という指標を作りました。企業様も作業マニュアルを見て、例えばスキル2のビルメワーカー様はここまでができる人のことを言うんだなっていうことが理解できます。
そして、たくさんのワーカー様がその作業ができるレベルまで持っていけるようにスクールをつくったんです。
こういったように色々な叱咤激励を頂きながらそれを真摯に受け止めて改善し、サービスとして成長していくんだなと思っています。全部本当にありがたい意見です。

現場を知っていることが一番の強み!

Q4.保険やスクールなどの対策を行ったことで企業様からの反響はどうでしたか?まず保険はやっぱり安心して人材を呼べるというようなことで企業様から圧倒的評価いただいています。現場で物を壊してしまうということはほぼないですけど、もしもの時のために保険があると安心できるとのことで喜んでもらっています。
例えば消火器の点検とか感知器の点検(炙り棒を持って点検すること)は本当に各社によって細かくここまでができてできると言えるとか(基準が)違うんですよね。それを作業マニュアルによってしっかりと見える化した状態になったことで、ワーカー様の方もここまでができるなら星2なのかと分かりますし、そこまで上げるためにスクールがあるんだっていうのが分かってもらえました。 作業マニュアルを『ビルメ』サービス内で公開して、企業様にも見ていただいて、それからかなりマッチングの量が増えたなあって思いますね。
「ビルメスクール」の教材は全部会社のチームのメンバーたちで資料を作りました。写真も一つ一つ現場で撮っています。僕たちが消防設備工事をメインでやっている会社だからこそ現場に即したマニュアルが作れたんだと思います。資料の内容を見てもらえたらこれは現場を知らなければ無理やなっと分かるかと思うんですけど。やはりそういう実際の現場を知っていることが当社の強みです。

多種多様な人に消防設備の仕事を!

Q5.「ビルメスクール」をリリースされてからワーカー様はどんな感想を持たれる方が多かったですか?
ありがたいことにすごく好評です。消防設備点検っていうそのスキルを就職もせずにつけるのは本来かなり難しいことです。でも、今の仕事をやめていきなり異業種に行くってなかなか精神的なハードルが高いと思うんですよ。転職をしなくても、スキルがなければ副業でさえなかなか難しいことだと思います。もっとこの業界でスキルをつけたい、でも今の仕事を辞めたくない、副業として携わりたいっていう方は「ビルメスクール」をとても喜んでくれていますね。
「ビルメスクール」に通われる方は、本業ではなく副業でやってみたいという方向けですが、もちろんこの業界での就職も視野に入れながら、経験を積んでみたいという方もいらっしゃいます。意外なところでは現役消防士さんなのですが、ゆくゆくは民間の業界で働きたいという方が消防設備をやることが多かったりします。また、他の公務員の方々も意外と民間の業界で働くことに興味あるので、この仕事に注目している場合が多いです。そういう人は公務員なので今は副業ができないんですけど、スクールなら通えるんですね。スクールを通して現場のことを知るっていうことができるので、そういった方からも人気があります。意外と多種多様です

最短たったの3ヵ月でスキルが身に付くことを目指す!

Q6.「ビルメスクール」に通ったら、どれくらいで働けるようになるのでしょうか?

消防設備点検って何人かでやるので、その現場のリーダーがやるようなことは無理なんですけど、補助作業員としての能力はレベル別に分けることで、その各レベルのスキルがつきます。あとは企業様がどのレベルの作業員の方をその日に欲しいかで決まります。ビルメスクールには色んなカリキュラムがあります。『ビルメ』でいうスキル5「部屋周りの点検ができる」くらいのスキルが3ヶ月ほどでつくように、今カリキュラムをさらに増やしている状態です。
スクールじゃなくて、どこかの会社に就職するっていう形でしたら間違いなく三ヶ月以内で消防設備スキルはつくと思います。
星5か4くらいのレベルのスキルさえつけていただければ『ビルメ』が展開するエリアではなかなか安定して働けるのかなと思います。そのスキルを持っていたら会社にも就職しやすいですしね。いろんな意味で精神的な安定を得れると思いますよ。

誰もが即戦力として働ける仕組み

Q7.「ビルメスクール」に通ったら消防設備業界未経験の方が即戦力として働けるっていうことですか?

はい、大丈夫です。どなたでもスクールでしっかりと受講してもらって、一応、考査のようなものがありますが、一生懸命普通に受講して頂いたらほとんど全員通るかなと思います。また座学の方でしたら小テストがあるんですけど、まともにやっていたら大丈夫です。なので異業種の方でもどんな方でも基本的には「ビルメスクール」を卒業していただいたら、『ビルメ』で定めている一定の基準のスキルっていうのを手に入れることができるということです。
ただ、作業段階を5段階に分けているっていう話をしましたが、スキル5に行ったら消防設備士としてプロかといったらが全然そうではないですよ。あくまで四人とかで作業するとしたら責任者は、やっぱり何年もこの業界でやっていて、何かあった時の判断が正確にできるような経験を持っている方です。そして、補助作業員は星5でもあくまでも補助しかできないんですね。色んなスキルの人たちが混ざり合って、 チームを構成するので「ビルメスクール」では三ヶ月で補助者としてのスキルをつけれるっていう感じですね。

日本新記録?伝説の最速資格取得

Q8. 吉村社長ご自身は7ヶ月で8種類の消防設備士の資格を取得したそうですね!何かコツはありますか?

ほぼ気合いです。めっちゃ頑張りましたよ!試験日が地方によって違うので日本全国受けに行きました。消防設備士って各都道府県で二回ずつ行われるんですけど、試験を開催する日がバラバラだったりするので、いろんなところに行くとポンポン試験を受けられたりするんですよね。有給など使いながら各地に受験をしに行きました。
試験勉強に関しては、ほんまめっちゃ勉強してました。消防設備士になったばっかりの時に勉強も開始したんですね。なので現場で見たものをそのまま勉強でも最低限使えるということがありました。そういった点は全くこの業界で働いてない人よりはアドバンテージがありました。それでもその時はめっちゃ大変で、仕事が終わって帰ってから、睡眠時間2時間くらいで毎日勉強をしていました。
また、自分なりに一番物を覚えられる手段は何やろうと考えて、まず勉強の仕方を勉強しました。 どうやって勉強すれば自分にとって一番効率良く、知識を定着させることができるかを分析してみたんです。そこで自分にとって問題集をひたすら解くっていうのは合わないと気がついて、テキストを読んでから自分で問題集を作るということをしました。普通はそんなことしないと思いますが、自作の問題集を作ったんですよ。初めの消防設備士4類は普通に既成の問題集を解いたのですが、それで大体の消防設備士試験の特徴や試験元の癖みたいなのが分かったんで、その後はテキストの流れを理解すると、出題のポイントがわかるようになりました。それで自作の問題集を解くんですが、最初は二割も解けないですよ。それを全問百点になるまで何回も何回もぐるぐる解いていくんですけど、それを解けるようになった頃には本番で90%ぐらい解けるようになるんです。知識もずっと残るので、最初の4類の試験以外は全部その方式で受けました。もちろん寝る時間もなくなるくらいめっちゃ時間がかかりますよ。(笑)とても良いんですけどでみんなにおすすめするかっていうとまた別ですね。

すべては日本一のために

Q9.消防設備士の資格は全部コンプリートした方が良いのでしょうか?

 いや、そんなことないです。(笑)副業じゃなくて本業の人も全部なんてまず使わなかったりしますからね。
僕がコンプリートしたのは、自分がこの業界に入った時はすごいやる気はあったんですけど、最初は何をやったらいいかわからなかったのでとにかく資格の勉強をしようと思ったんです。当時から日本一って言葉がとにかく好きなんですが、ネットで調べたら全部を一年で取得したのが最速記録と書いてたんでこれを抜いたろと思いました。(笑)最初は半年で全部合格って決めたんです。でも僕は消防設備8種類のうち一回1類で落ちているんです。あとは受験の日程が1ヶ月以上何も無い時期があったので、惜しくも7か月になってしまったことがちょっと悔いではあるんですけど。でも多分当時では日本一だったかなと思います。日本一になるために頑張りました!
消防設備の仕事は、補助作業は資格がなくてもできることがいろいろあるので、資格がなかったら就職できないのかっていったら、全然そんなことありません。そんな方でもやれることはたくさんあります。ただ資格があった方がもちろんできることも幅が増えることはあります。持ってた方が就職はしやすいですし、持っていた方が『ビルメ』の中でも作業員として行きやすいってことはもちろんあります。

消防設業界はおもしろい!

Q10.消防設備士に興味あるなら「ビルメスクール」で学んでみるという選択は有効ですね。

はい。資格を持っていなくても「ビルメスクール」は通えるので、一回現場でやってみてこんな業界なんやとか、こうやって仕事するんやと理解してから、その後にやる気が上がった状態で資格の勉強とか頑張ったらいいかもしれないですね!

編集後記

『ONE PIECE』のルフィに憧れて起業、仕事マッチングサービス『ビルメ』を無事リリースさせました。サービスを更に大きく、より良いものにするため「ビルメ保険」や「ビルメスクール」をつくり進化を続けています。人材不足に悩む消防設備業界で「誰でも副業ができる」という付加価値の魅力をつくり、異業種でも未経験でもどんな人でも働ける仕組みもつくりました。業界に人がいないなら、他からの流入を生み出すという発想はさすがです!次の第四章では消防設備業界の未来について吉村社長のご意見をインタビューします!

※ルフィ・・・『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載の尾田栄一郎著の少年漫画作品『ONE PIECE』(ワンピース)に登場する麦わら帽子がトレードマークの主人公モンキー・D・ルフィ。「海賊王におれはなる!」という夢を持って一人で無謀な航海に出ます。そして仲間たちに出会い、数々の困難を一緒に乗り越えていく大人気冒険物語です。

interviewee

吉村 拓也

吉村 拓也(よしむら たくや) 大阪府出身。株式会社WAVE1代表取締役。建築物環境衛生管理技術者、二級建築士、消防設備士(甲種含む全種)資格保有。

SHARE

GENBAroo(ゲンバルー)は「現場」で「頑張る」人たちを
応援するメディアです!

人々の生活を支えるヒーローのために現場で使えて役立つ情報をお届けします。