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第2章 消防設備業界のルフィ念願の起業!

第2章 消防設備業界のルフィ念願の起業!
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消防設備点検やビルメンテナンスにおいてワーカーと発注者をマッチングさせるサービス『ビルメ』。業界が抱える人材不足問題の解消や、気軽に副業が可能になると話題になりました。そんな画期的なサービス『ビルメ』創業者の吉村社長に4回に渡ってインタビューをします!第一章で、周りから反対されながらも「東京で大冒険物語を作る」と大阪から上京した吉村社長。今回は念願の起業についてのご体験をお話してもらいます。

東京で冒険のはじまり。仕事探しも物語や!

Q1.大阪から上京してからまずはお仕事探しを行ったそうですが、どんな仕事を探したんですか?

上京してから最初はほんとに何もやること決めてなくて「決めるところも物語や!」と、行ってから決めようとしたんです。
でも、何も思いつかなくて、最初はアルバイトを24時間やろうと考えました。妻も一緒に連れてきていて、お腹に子供がいる状態だったし、所持金も10万円しかないし・・やばいなっていう状態だったんです。とりあえず寝ずにコンビニでアルバイトするくらいのやる気はあったので、まずはアルバイト雑誌を開いて探しました。
そこで「あれ?アルバイトってこんなに安いんや」って気付いたんですよ。そんなことも調べずに行ったんですよね。(笑) その時、これはきついなと思い知りました。
これ以外に何かないかと、改めて自分のスキルを振り返ってみた時に消防設備士って資格が使えないかなと思いました。今まで「嫌いや嫌いや」って言ってたけど、とにかく自分は手に職になる資格を持っている。消防点検って何人かでやるんですよね。四人とかでやるときに補助作業をやるような人っていうのは別に社員じゃなくて良いんです。スポット的に人を集めてきてチームを組んで作業を行うことがよくあります。それなら、そういうところに僕が入れればちょうどいいと思いつきました。一応、個人事業主という形をとりますけど、アルバイトの延長みたいな感じですね。
それで僕を使ってくれるような所がないか探してみたんです。自分には最低限のスキルぐらいはあります。だから「消防設備士」として、まずはネットでいろんな会社に電話をして問合せていくっていう作業をスタートしました。

吉村社長が考える消防設備士の魅力とは?

Q2.やはり困ったときには「手に職」が心強いですね!消防設備士の魅力ってどんなところだと思いますか?

まず、「法律で決まっている」ということがポイントですね。
一戸建て住宅以外の建物はいっぱいありますけど、マンションとか事務所ビルとかショッピングモールとかそういう所は、半年に1回消防設備点検をやらないといけないという事が法律で決まっている。それに対して、これだけ今建物があるのにその分の作業員がいるかって言ったらいないのではないかなって東京にきた時はそう思ったんですよね。
大阪では人手不足っていうことは、よく分かっていたし、東京でも同じような状態じゃないかなと。慢性的な人材不足もビジネスとしてとらえたらチャンスでもあるかなっていう魅力ですね。
あとは、やっぱり消防設備がちゃんと動くかどうかをチェックする点検は、人の命に関係するような素晴らしい仕事でもある。やりがいにもなりますね。人によっては毎日同じことをやって「やる気感じへんわ」と思う人もおると思うんですけど、でも携わり方とか自分の捉え方次第では、やりがいのある仕事といえるのかなって思いますね。

消防設備士としてフリーランスに。

Q3.フリーランスはゼロの状態で自分から仕事を取らなければなりません。大変そうですが仕事はどんな風に獲得していったんですか?

僕の場合はフリーランスってどうやってなれるかとか、開業届を出さないといけないとか、何も知らなかったんです。
たまたま最初に東京で知り合いになった人の友人が税理士だったので、後で教えてもらって色々と知ったぐらいです。
何もわかってはいなかったんですけど、とりあえず生活費を稼がなきゃあかんと。それなら消防点検で人が足りなそうな会社に僕が入れたらいいなと思いました。
そこで、Google検索で「消防設備点検 求人 東京」って検索したんですよ。求人を出している会社って人が足りないのちゃうかなと思って。それで検索結果に出てきた会社に片っ端から電話しました。最初はもちろんめっちゃ不安だったし緊張しました。「あのすいません、大阪から来た吉村って言うんですけども」という感じではじめて、向こうは事務員さんが出たんですけど「はい?」といぶかしがられました。(笑) やばい切られると思って「 あの・・しゃ社長さんに代わってもらうことできますか?」って、なんとかお願いして社長さんに代わってもらいました。「何?」って当然冷たく言われますけど「あの・・すいません。応援に行かせて欲しいんですけど」(応援→人が足りないところにスポット的に補助作業として入ることをいう業界用語。)「ああ、いいよ。じゃあ面談しよっか。資格持ってんの?」「はい。資格は消防設備士をもっています」「炙りできる?」(炙り→棒を使って感知器の点検をする作業のことをいう業界用語)「できます」「じゃあ何時から来て」といった感じだったんですが、その時は「面談とれた!!すげぇ」って感動しました。
それから次の会社に電話して、一日に2件アポがとれたんです。そして次の日も1件、その次の日も1件面談を取れて、その中でメインとして3社を決めました。これってすごくないですか?最初の会社なんて「うち、人が足りないからさ、4日後から来れる?」って言われました。「この日とこの日とこの日にきて欲しい。スケジュールいける?」スケジュールなんて・・そりゃ行けますよ。白紙やから。(笑) 何にもないから全部行けますと答えました。はじめの会社から仕事のスケジュールをもらって、次の会社からももらって‥という具合にパンパンになりました。

最低限のスキルがあれば呼ばれる業界!

Q4.人手不足だからこそ、手に職があれば引く手数多の状態だったんですね!

つまり僕は4月に何も決めずに東京に来たけど、8日後からもう働けているんですよ。
その間に他の面談も行ったりして、最初の会社からずっと仕事をもらえました。これはすごいことだと思いましたよ。こんな見ず知らずの人間にでも最低限必要な資格と経験があればすぐに来いって仕事をくれんのやって。何でかって考えたら、別に吉村拓也だからではないですよね。消防設備士っていう最低限必要な資格を持ってて、最低限のスキルがあったら、それだけで呼ばれるんですよ。
これはほんとにすごいと思いました。報酬については1日働いたらいくらかっていうことは先に伝えられてるから合計金額を計算してみたんですが、1か月で30万円超えるんちゃうかみたいな状態でした。すごい感動的で今でも覚えてますね。
僕は上京する時に10万円しか持って来てなかったのですが、東京に来てから8日後に初めて仕事にありついて、そこでちょうどお金がなくなったんです。「もうない!」って絶望しましたよ。だから仕事に行ったら「その場で手取りでもらえないですか?」って聞いたんですが、初めて1日働いた時の報酬が12,000円やったんですね。交通費込みですけど。12,000円もらった時に体に衝撃が走りました。「僕はどこにも雇われず見知らぬ土地で稼げた! この金額をこの日数全部もらえるの?すごい!」と思って、これで生きていけるやんって確信したと同時に安心したのを覚えています。

フリーランスの方が稼げるのか?

Q5.消防設備点検ができればフリーランスでも安定して生きていけますね!フリーランスと会社員ではどちらが稼げると思いますか?

それは会社によりますよね。会社の規模や、立場とかにもよると思います。
会社に就職すれば、手取り的なところとか、厚生年金に入れたりとか、そういう風な手厚いものを色々と受け取れます。フリーランスなんて、怪我して足骨折したら動けませんから、その間は収入0 円ですからね。実は僕はフリーランスはおすすめしてないんですよ。フリーランスをできる状態を作っといた方が良いって言ってるだけなんですよね。
やっぱり会社員だから受けることができる利の方が多いんじゃないかな。でも何かあった時の備えとか、一時的に行なえる仕事があるという状況にしとけば、安定的な生活力として役立つと思います。

日本一を目指すなら消防設備業界で!

Q6.そもそも嫌いだった消防設備業界なのに、結局この業界を選んだのはなぜですか?

もともとはフリーランスの消防設備士になるために東京に来たわけじゃなかったんですよね。どこかの業界で日本一の会社をつくるのが目的だったんです。
最初はニートですけど、おもしろい起業物語を描いていくぞっていう目標が最初からあったので、最初は食いつなぐために消防設備士の仕事を取っていたわけです。そうやって消防の仕事をやりながら、何か別の出会いがあると思っていたんですよ。
それが、1日の報酬12,000円もらってから衝撃を受けて、「すげぇ!この業界って今までは嫌いって言ってたけど、ちゃうな!」って変わりました。消防設備士の資格を持っていたら、こんなことができるんだと。この魅力をもっとみんなに伝えたいし、こういう風な状況をみんなができるように整えたいなと思いました。
消防設備業界って今まで嫌いって言っていたけど、今言ったような魅力があるから、この業界でしっかりと勝負しよう。どこかの業界で日本一を目指すなら、消防設備業界で日本一を目指そうと、この時に決めました。
この業界でTOPを連ねる会社は全部製造メーカーなんですよね。消防設備をつくっているメーカーさんだから、勝つためには自分の会社は消防点検とか工事だけをやっていても絶対に勝てない。そこで業界の中でどこもやってないビジネスっていうのはIT事業じゃないかと思いました。ITはやったことないけどIT企業として成長していこうという風に決めたんです。

点検・工事とITサービスの二刀流

Q7.未経験のIT業界とのことですが、どうやってはじめたのですか?

ITのことは本当に全く分からなかったんです。アプリっていうのも名前は知ってるけど、じゃあどういうものかってよくわからないレベルでした。
とにかく消防設備の点検とか工事っていうのをやって稼ぎながら準備をしようと計画しました。ITの立ち上げは結構お金かかるんやろなってぼんやり思ってましたから。それなら、まずそのお金を稼がないといけないので、そのためのチームを作ることからはじめました。点検と工事で稼げるチームを作って、これから考えてる IT事業でも連携していくつもりでした。
そんなわけで、まずは点検と工事の部隊を先につくることに決めて、そこから一人でいろんなところへ行きながら、いろんな出会いがあって、仲間も増えていきました。
最初に集まった5人は無資格・未経験みたいな状態だったんですよ。東京に引っ越してきて、近くで出会った友人から紹介してもらうといった形で従業員集めをしていきました。従業員と言っても最初の5人は保険もかけれなかったです。僕は個人事業主ですが、日当を渡すだけでみんなが個人事業主のような感じでした。
法人化するまで時間がかかりましたけど、それまでずっと保険をかけれず、みんなには「いつかかけるからな」って言ってました。そして、ある程度人が集まってくれて組織ができて、やっと法人化という流れでした。

親友との奇跡的な再会!

Q8.吉村社長のバイブル『ONE PIECE』みたいに冒険の中で一人一人仲間が増えて行ったんですね。

そうですね。一人一人の出会いとかも振り返ったら面白いんですよ。
一つエピソードをあげるとしたら、最初のメンバーで一人だけ昔から知ってる人間がいてその話ですね。中学の時からの親友だったんですが東京に引っ越してしまって、大学生の時にはお互い携帯番号が変わってもう連絡がとれなくなっていました。
それで上京した時に「出会えるようなきっかけがないかな」と思っていたんです。そんなある日、消防点検の補助作業で行った現場がその親友の実家だったんです。その親友が東京に引っ越してから、たまに家に遊びに行っていたので、そのマンション(親友の家)に見覚えがあったんです。
会えるかもしれないと思っていたら、点検の時にお父さんが出てきたんですよね。もう感動の再会ですよ。それで連絡先を教えてもらって、久しぶりに連絡ができて、その後に彼は僕の会社に入社してくれました。そんな奇跡的な社員との出会いもありました。

一緒に日本一を目指さんか?

Q9.初めの頃はけっして良い労働条件ではないのに、社員として仲間になってもらうためにどんな口説き文句を言うんですか?

「消防設備業界で日本一を目指すから、一緒に目指さんか」っていうのは最初の一人目からずっと言い続けています。
最初の頃は事務所もない、車もない、道具もない、何にもないような状態でスタートしてるんです。会社の事務所なんてないので、コンビニのイートインで、事務作業をしてたんです。そんな僕が「業界日本一目指すから一緒についてこーへんか」って言っているので、今思えば、よくついてきたなーなんて思いますね。(笑)

いざという時にも怖くない。そんな状況をみんなにも!

Q10.『ビルメ』というサービスを思いついたきっかけは何ですか?

東京に来てから1年半ぐらい経って、やっと一番初めのITができる人間というのに出会ってスタートできる状況ができました。
それまではITサービスを作りたいっていう想いは頭にあったけど、全くどうしたらいいかわからへんかったので、着手できなかったんです。その人間が来てからやっと着手し始めてっていう感じですね。
『ビルメ』というサービスを思いついたきっかけは、やっぱり東京に来た最初のエピソードで12,000円をもらって感動したことですね。僕がフリーランスとして起業した頃、当時のニュースでは何をやっていたかって言うと、AIによって大量なリストラがこれから起きるっていうことだったんですよね。何の準備もしてない状況で突然ポンポンって肩叩かれて「明日からキミもう来んでいいよ」って言われたら、どんな気分なんやろうな。
でもそんな時に俺だったら怖くないぞと思えるんです。消防設備の仕事がありますから。これを皆ができる状態にしておいた方が良いんじゃないかなって。
別にみんな今すぐ仕事を辞めて消防設備士のフリーランスになれって言ってるんじゃないんですよ。そういうポンポンって肩をたたかれた状況になった時に、僕みたいな状況を用意できていたら「あ、OKです!今までありがとうございました!」って言えるじゃないですか。こんな状況を作りたい。そういう想いから『ビルメ』を思いつきました。

どんな人でも副業として使えるサービス!

Q11.万が一の時でも自分自身を守れる武器のようなサービスですね!『ビルメ』はどんな方が使っていますか?

大前提としては、どんな方でも使えます。女性でも、高齢の方でも使うことはできますし、副業感覚でお使いいただく人の割合が多いですね。
何か新しく自分のスキルっていうのをつけておこうかなっという方に最適です。別に消防設備業界で独立したいとかではなく、自分自身の価値を高める一つとして、消防設備士を選択する人が増えてきています
現時点で多いのは消防設備に何かしら関連してるような周辺領域の方達ですね。ビル管理会社とか電気工事士とかビルメンテナンスで働いてたりとか。あと建設系ではゼネコンやサブコンとか。
そういう方達って会社から消防設備士を取得するように言われるんですよ。資格をとって、給料はちょっと上がったけど、そんなに消防設備士の資格を使わないなって人が多いと思うんです。
消防設備士は資格現場スキルの二つが必要ですけど、そういう人たちは資格はすでにある、あとは現場スキルなんです。
だから、僕たちは最低限の現場スキルを教えるスクールとして実際の消防点検の現場に呼んで教えるということをしています。こういったサービスも用意しているので現場スキルはなくても周辺業界の人が利用することが多いです。
また、メディアで発信することがあるので、それで興味を持った全然関係ない業界からも働きにくる人がいます。そういった方もスクールにも通ってどんどん副業していますよ。どんな方にでも『ビルメ』活用してもらいたいですね。

編集後記

『ONE PIECE』のような大冒険物語をつくるということだけ決めて上京した吉村社長でしたが、消防設備士のスキルに救われ大成功しました。そんな魅力的な消防設備士として誰でも簡単に仕事を見つけられるようにと『ビルメ』を生み出します。「消防設備業界で日本一目指す」という目標を共有する仲間たちに恵まれたのは、吉村社長のお人柄が良いからこそだと思いました。次の第三章では『ビルメ』のヒットで成功した吉村社長に待ち受ける次なる試練についてインタビューします!

※『ONE PIECE』(ワンピース)・・・『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載の尾田栄一郎著の少年漫画作品。麦わら帽子がトレードマークの主人公モンキー・D・ルフィは「海賊王におれはなる!」という夢を持って一人で無謀な航海に出ます。そして仲間たちに出会い、数々の困難を一緒に乗り越えていく冒険物語です。

interviewee

吉村 拓也

吉村 拓也(よしむら たくや) 大阪府出身。株式会社WAVE1代表取締役。建築物環境衛生管理技術者、二級建築士、消防設備士(甲種含む全種)資格保有。

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