【ステップアップを目指す】電気系技術者が取得したい資格を解説
電気系の資格には様々な種類が存在します。そのため、複数の資格を取得することでステップアップを目指すことが可能です。
本記事では、ステップアップを目指すために取得したい資格について解説します。各資格の難易度や概要についても解説していますので是非ご覧ください。
この記事を参考に電気系技術者としてステップアップを目指してください!
目次
01.電気系技術者が取得したい資格とは
電気系の技術者がステップアップするために取得したい資格は以下の6つです。
- 電気工事士【第一種・第二種】
- 電験三種
- 電気工事施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
- 工事担任者
- その他資格
それぞれの資格概要や業務内容について見ていきましょう。
1.電気工事士(第一種・第二種)
電気工事士は、電気設備の工事・取扱いに必要な国家資格です。第一種と第二種に区分が設けられており、それぞれで従事できる電圧の幅が違います。
- 第二種電気工事士・・・一般用電気工作物(600V以下の電気設備)
- 第一種電気工事士・・・第二種電気工事士の範囲+自家用電気工作物(600V以上かつ最大電力500kW未満)
第二種と第一種の従事できる電圧の幅は上記の通りです。
第二種電気工事士は、低圧で受電している電気設備が該当します。そのため、一般住宅や小規模施設・店舗の配線工事・電気工事を扱うのが業務の内容です。
一方で、第一種電気工事士は低圧の設備に加えて、ビルや工場など高圧で受電している設備の配線工事・電気工事も取り扱えます。病院や大型商業施設での作業にも対応しているのが特徴です。
2.電験三種
電験三種は、自家用電気工作物に関する保安・監督を取り扱う国家資格です。第一種〜第三種で区分が設けられており、下記の通りそれぞれで受電設備の規模が違います。
- 電験三種(第三種電気主任技術者)・・・電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5,000KW未満の発電所を除く)
- 電験二種(第二種電気主任技術者)・・・電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物
- 電験一種(第一種電気主任技術者)・・・すべての事業用電気工作物
各区分の違いとしては上記の通りです。高圧受電の電気設備の多くは6,600Vで受電しています。そのため、電験三種でほとんどの設備に対応しているのが特徴です。
業務内容としては、月に一度の月次点検や年に一度停電して行う年次点検、電気設備の竣工検査などが挙げられます。このほか、資格を取得していると電気に対する深い知識の証明になり、自身の価値が大幅アップするのもメリットです。
3.電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士は、1級と2級に区分されている国家資格です。複数の種類がある「施工管理技士」の一つで電気工事に関する施工管理を扱います。
資格区分 | 従事できる業務 |
---|---|
2級電気工事施工管理技士 | ・一般建設業の電気工事の専任技術者 ・一般建設業の電気工事の主任技術者 |
1級電気工事施工管理技士 | ・特定建設業の電気工事の専任技術者 ・特定建設業の電気工事の主任技術者及び監理技術者 ・一般建設業の電気工事の専任技術者 ・一般建設業の電気工事の主任技術者 |
各区分の業務範囲の違いとしては、上記の通りです。元請けで下請けに総額4,000万円以上発注する建設業が特定建設業に該当します。1級は特定建設業の取扱いにも適応しているのが特徴です。
また、具体的な業務内容としては次の5つが挙げられます。
1.電気工事の施工計画の作成
2.工事の工程管理
3.工事の品質管理
4.工事の安全管理
5.電気工事の監督
電気工事に関する仕事を扱っている方でステップアップを目指す場合は、積極的に狙いたい資格です。
4.電気通信工事施工管理技士
電気通信工事施工管理技士は、先ほどご紹介した施工管理技士の資格における「電気通信工事」を取り扱う国家資格です。令和元年に新しく設置されたため、他の資格よりも歴史の新しい資格と言えます。
こちらも電気工事施工管理技士と同様、1級と2級の区分にわかれているのが特徴です。1級では、特定建設業における電気通信工事にも対応しています。
また、通信工事の種類は主に次の5つです。
1.有線電気通信設備工事
2.無線電気通信設備工事
3.ネットワーク設備工事
4.情報設備工事
5.放送機械設備工事
上記の通信工事における
施工計画の作成や工程・品質・安全管理などを行うのが電気通信工事施工管理技士です。新規資格で保有者も比較的少ないため、積極的に取得を狙うことで自身の価値を確立できるでしょう。
5.工事担任者
工事担任者は、電気通信設備工事やその監督を行うための国家資格です。アナログ電話回線やデジタルデータ回線などを中心に様々な端末設備を取扱います。
元々はDD種とAI種で区分されていましたが、令和3年度よりAI・DD総合種が「総合通信」、DD種が「デジタル通信」、AI種が「アナログ通信」に改名されました。
- 総合通信・・・
デジタル伝送路設備またはアナログ伝送路設備に端末設備等をつなぐ工事 - 第一級アナログ通信・・・
総合デジタル通信用設備に端末設備等をつなぐ工事およびアナログ伝送路設備に端末設備等をつなぐ工事 - 第二級アナログ通信・・・
総合デジタル通信用設備に端末設備をつなぐ工事(総合デジタル通信回線の数が基本インターフェースで1のものに限る。)およびアナログ伝送路設備に端末設備をつなぐ工事(端末設備に収容される電気通信回線の数が1のものに限る。) - 第一級デジタル通信・・・
デジタル伝送路設備に端末設備等をつなぐ工事。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等をつなぐ工事は除く - 第ニ級デジタル通信・・・
デジタル伝送路設備に端末設備等をつなぐ工事(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が毎秒1ギガビット以下であって、主としてインターネットに接続するための回線に係るものに限る。)。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等をつなぐ工事は除く。
工事担任者は、現代社会のネットワークを支えます。そのため、今後も活躍の場が広がる資格と言えるでしょう。
6.その他資格(消防設備士やエネルギー管理士など)
このほか、電気系技術者が取得しておくと便利な資格として、以下の3つが挙げられます。
1.消防設備士第4類
2.消防設備士乙種第6類
3.エネルギー管理士(電気分野)
消防設備士は、建物内にある消防設備の整備や点検に従事できる資格です。甲種を取得すると工事も取り扱えます。中でも火災報知設備を扱える第4類と消火器を扱う第6類は需要の高い資格です。
電気系の技術者でも会社によっては消防設備の点検を扱う場合があるため、取得しておいて損はありません。
また、電験三種の上位資格である電験二種の取得も将来的に狙っている方は、エネルギー管理士の電気分野を同時に受験するのがおすすめです。エネルギー管理士の電気分野は電験三種よりも内容が深く、電験二種と比べると問題が優しいため「電験2.5種」と呼ばれることがあります。
エネルギー使用の改善と効率化を図る仕事なので他の資格との相性も悪くありません。そのため、積極的に資格取得を狙いたい資格です。
02.電気系技術者が取得したい資格の難易度
続いて、先ほどご紹介した資格の取得難易度を見ていきましょう。各資格の合格率を踏まえながら低・中・高の3段階にわけて解説します。
難易度低:電気工事士(第二種・第一種)・消防設備士など
取得難易度が比較的低い資格は、次の通りです。
- 第二種電気工事士
- 第一種電気工事士
- 消防設備士乙種第6類
- 消防設備士第4類(甲種・乙種)
上記の資格は、過去問と類似した問題が出題される傾向にあるため、比較的対策しやすいのが特徴です。
資格 | 合格率の目安 |
---|---|
第二種電気工事士 | 筆記試験:50%~70% 技能試験:60%~70% |
第一種電気工事士 | 筆記試験:50%前後 技能試験:62%~67% |
消防設備士乙種第6類 | 38%~42% |
消防設備士第4類(甲種・乙種) | 乙種:32%~39% 甲種:30%~42% |
上記の通り、合格率も低くありません。各資格で需要も高いため、電気系の技術者がステップアップで取得するのにおすすめの資格です。
難易度中:電気工事施工管理技士・工事担任者など
先ほどの資格よりも取得難易度が少し高い資格は、次の通りです。
- 電気工事施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
- 工事担任者
上記の試験における合格率の目安についても以下の表をご覧ください。
資格 | 合格率の目安 |
---|---|
電気工事施工管理技士 | 2級第一次検定:55%~65% 2級第二次検定:40%~45% 1級第一次検定:40%~56% 1級第二次検定:62%~74% |
電気通信工事施工管理技士 | 2級第一次検定:57%~64% 2級第二次検定:43%~57% 1級第一次検定:43%~49% 1級第二次検定:49%前後 |
工事担任者 | 1級アナログ:26%~35% 2級アナログ:27%~43% 1級デジタル:26%~33% 2級デジタル:30%~40% 総合通信:21%~28% |
上記を見ると工事担任者の合格率は、受験する区分によって難易度が高くなることが分かります。そのため、受験する区分にあわせて計画的な対策を取ることが大切です。
また、施工管理技士系の資格は合格率だけ見ると比較的高いことが分かります。しかし、受験するまでに実務経験が必要となるため簡単に取得できる資格ではありません。簡単な問題が出題されるわけでもないため、試験に向けて対策を継続する必要があります。
難易度高:電気主任技術者(電験)・エネルギー管理士など
ご紹介した資格の中でも取得難易度が高い資格は、主に次の2つです。
- 電験三種(第三種電気主任技術者試験)
- エネルギー管理士(電気分野)
上記の資格は、試験範囲が非常に広くなるだけでなく1問あたりの難易度が大幅に上がります。合格率の目安としては、次の通りです。
資格 | 合格率の目安 |
---|---|
電験三種 | 8%~10% |
エネルギー管理士 | 28%~33% |
合格率に関して電験三種が10%未満と非常に低いことが分かります。試験が全部で4科目あり、各科目で広い範囲の問題が出題されるためです。そのため、長期間にわたって試験対策を行う必要があります。
また、エネルギー管理士の電気分野に関して合格率だけ見ると30%前後と低くありません。しかし前項でも軽くお話しした通り、エネルギー管理士を受験するのは電験三種合格後の方や既に高いレベルまで電気知識を身につけている方です。
試験の傾向としては対策しやすいですが、出題される問題の内容は非常に難しいため、取得難易度も他の試験より高くなります。
03.取得したい資格に受験資格(実務経験)はある?
これまでご紹介した資格は、受験資格が必要なものと必要ない資格にわかれます。ここでは、各資格における受験資格の有無を見ていきましょう。
受験資格が必要な資格
受験資格が必要な資格としては、主に次の3つが挙げられます。
- 消防設備士甲種4類
- 電気工事施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
消防設備士の甲種においては、受験する場合は受験資格を満たす必要があります。また、施工管理技士系統の資格も同様に種類に関係なく受験資格を満たさなければいけません。
受験資格の詳細について、消防設備士は「消防試験研究センター」、施工管理技士系統の資格については「施工監理技術検定」や「全国建設研修センター」にて掲載されています。
取得を検討している資格における受験資格の内容については、一度各ページにて確認しておきましょう。
受験資格が不必要な資格
次の資格については、受験資格がありません。
- 第二種電気工事士
- 第一種電気工事士
- 電験三種
- エネルギー管理士
- 消防設備士乙種4類・6類
- 工事担任者
年齢や学歴に関係なく誰でも受験が可能です。積極的に資格取得を狙ってください。
04.資格を取得するならどの順番が良い?
ここまで読んだ方の中で「資格が色々あるのはわかったけど、どの順番で取得するのが良いの?」と疑問に思った方はいるのではないでしょうか。
結論からお話しすると、取得する順番や従事する仕事によって異なります。優先したい順番の目安として次の表を参考にしてください。
種類 | 優先したい順番 |
---|---|
電気工事関係に従事したい方 | 1.第二種電気工事士 2.第一種電気工事士 3.消防設備士(電気工事施工管理技士の受験資格を満たすまでに取得する) 4.電気工事施工管理技士 |
電気主任技術者として従事したい方 | 1.電験三種 2.消防設備士乙種6類や第4類 3.エネルギー管理士 |
電気通信関係で従事したい方 | 1.工事担任者 2.電気通信工事施工管理技士 |
また、電気関係の職業で関係なくおすすめの資格は「第二種電気工事士」です。試験内容に電気の基礎的なものが多く、最初に取得する資格として向いています。
また、低圧の電気工事を取り扱えるため非常に需要が高いのも特徴です。逆に、第二種電気工事士がなければ従事できないため、場合によって仕事が制限される可能性があります。
まずは第二種電気工事士を取得し、その後は自分が目指す仕事に必要な資格の取得を目指しましょう。
05.電気系資格を取得することで給料や役職に影響がある?
電気系統の資格を取得すると主に3つのメリットを得られます。
- キャリアアップを狙える
- 資格手当による年収・給料アップ
- 転職で有利に働く
電気系統の資格を取得すると、その分野に対して深い専門知識があると認められます。その後、現場で経験を積むことで自身の技術者としての付加価値は更に高まるでしょう。結果、企業からの信頼度も上がりキャリアアップにつながるというわけです。
また、企業によっては資格を保有していると給料に資格手当がつきます。具体的な金額は企業や資格によって異なりますが、毎月5,000円前後が目安です。高い場合は10,000円前後の手当がつくため、金銭面からも大きなメリットがあると言えるでしょう。
加えて、資格を保有して経験を積んでいる方は転職で有利に働くのもメリットです。現在の職場に満足していない方は、より環境にあった職場を見つけるのも1つの方法と言えます。
まとめ:自分に適した電気系資格でキャリアアップを目指そう!
本記事では、ステップアップを目指す電気系の技術者向けに取得したい資格について解説しました。電気系の資格には様々な種類があるため、自分が従事する仕事と相性の良い資格取得を狙うことが大切です。
また、最初に何か電気系の資格を取得する場合は第二種電気工事士をおすすめします。その後、第一種電気工事士や電験三種、工事担任者等の資格取得を目指してください。
また、電気系の資格ではありませんが消防設備士なども電気系と相性の良い資格です。本記事の内容を参考にして取得を狙う資格を見つけましょう。
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